2020.05.14

ギフトエコノミーで広がる優しさの連鎖

毎月数名からお金をもらい、住むところが与えられ、秘書がつく。

こんな驚きの暮らしをしている人がいます。

いったいなぜそのような生き方が可能なのでしょうか?

答えはシンプル。

「自分にできることの中から、誰かの役に立つことをする。」

それが巡り廻って、自分のもとに返ってくるというのです。

 

そんな「ギフトエコノミー」の実践者である石丸弘さん。

今回はオンラインのお話会で、その「ペイ・フォワード=恩送り」の仕組みをひも解いてみました。

「お金を払って対価を得る」資本主義的な経済システムでなく、「人から受け取ったものを、次の人に渡していく」贈与による経済。

おくりものを受け取った人の幸せな気持ちや感謝が、次のギフトへつながっていく。

つまり、見返りを求めないおくりものが循環していくオルタナティブな経済なのです。

 

弘さんは、コンサル、コーチング、絵をかく、ホームページづくりなど多様なスキルをギフトとして人に与えています。

そして同時に、誰かに与えられたもので生きています。

どのような経緯で「ギフトに生きる」ようになったのか。

そこには、弘さんの「優しさ」にまつわるストーリーがありました。

 

小学校の頃に恋した女の子に好かれるために、とにかく優しくした青春の思い出。

それをきっかけに、大人になってからは「優しさ展」のプロデュースや、平和活動を行う傍ら、コンサルのお仕事をされていました。

転機になったのは、東日本大震災。

「とにかく自分にできることをしよう」と南相馬でガソリンがなくて避難できない人をSNSで見つけ、ガソリンがある場所を探して伝えたそうです。

遠く離れた見ず知らずの人にも、「優しさ」というギフトを届けることができた原体験が今の生き方につながりました。

 

弘さんいわく、ギフトは「洋服」のようなもの。

時期によって変わるし、無理せず自分に合ったサイズで選ぶのが大切です。

決して自分を犠牲にしてまで行うものではなく、道端のゴミを拾う、日々の仕事をこなすなど小さなものでもよいのだそう。

いただけるものは、喜んで受け取り「ありがとう」を伝える。

それもまた、ギフトのカタチなのです。

そして、自分自身も誰かの活力になる「存在という名のギフト」であることを忘れてはいけません。

 

このような小さなギフトでも、大きな影響となりえるので侮れません。

ギフトは、時を経て連鎖するからです。

 

ある少年の話。

友達と遊んだ帰り道、自転車に揺られ気分が悪くなってしまいました。

通りすがりの男の人が、苦しんでいる少年の姿を見て、手渡したのはライム。

「これで少し楽になるよ。」と。

その男性の優しさが心にしみ、後々の少年の人生に大きな影響をもたらします。

 

実はこの少年が、アメリカ発のレストラン「カルマキッチン」の創設者になるのです。

「あなたのお食事は、前に来たお客様によって支払われています。」

レストランに入ると、そう伝えられます。

そして、あなたもまた次のお客さんに食事をおくることで感謝の気持ちを表現することができる。

そんな恩渡しの取組みが、弘さんも含め今では世界中に連鎖しています。

 

このような連鎖がおきるのは、ギフトエコノミーが「恩返し」でなく「恩送り」の仕組みだからです。

つまり、「Give & Take」ではなく「Gift & Gift」で成り立っているのです。

例えば、給料の対価としての仕事ではなく、働けることに感謝し、自分が誰かに役立つ働き方をする。

喫茶店でお金の対価としてお茶を飲むのでなく、誰かが空間をつくり、農家が茶葉をつくり、店員さんが美味しいお茶をいれてくれることに喜びを感じる。

そんな風に少し発想を変えるだけで、世の中がちょっぴりよく見えてきませんか?

 

「些細なこともおくりものになることが分かり、ギフトの概念が変わった。」

「実は昔から日本人がもっている心なのかもしれない。」

弘さんのお話を聞く中で、参加者からはそんな声を聞くことができました。

最後にみんなで、自分の身近なギフトについて共有します。

家族や友達、自然の恵み、おいしいご飯、人とのつながりなど様々なものが、かけがえのないおくりものであることを再認識できました。

 

今回のお話会も弘さんからのギフトでした。

参加費もギフト制で、感謝を表す金額の支払いや自分ができることなど、みなさんに委ねられていました。

これを読んだあなたも、出来る範囲で「ギフト」を誰かに送ってみませんか?

社会や生き方が変容し、人のつながりが特に大切になる今だからこそ、小さな行動が世の中にしみわたるかもしれません。

この記事が、世界がちょっとだけ良くなるための「ギフト」になりますように。